山登りが大好きなみなさんに、
もっともっと山を好きになるためにオススメしたいのは「カメラ」。
ファインダーを通すと、いろんなことに敏感になります。
光の美しさや何気ない被写体の魅力に気づいたり……。
せっかくならお気に入りの一枚を残したいもの。
雰囲気のいい写真を撮るコツを写真家:野川かさねさんに伺います。 第2回のテーマは「“人物写真”で山写真にアクセントを」。 景色や植物だけでなく、登山者にも注目し 風景をシンプルに切り取る写真とはひと味違う一枚を撮りましょう。
- 白馬岳(しろうまだけ)より立山方面を撮影。 画面中央の山頂にぽつぽつと見えるのは登山中の人たちです。 山のカタチがキレイに見えるように切り取りつつ、 ミニチュアのように人を入れることで風景のスケール感を感じる写真に。 パッと見たときも奥行き感がありきれいな風景写真として楽しめますが、 よく見ると人が写っているという“面白い発見”がある一枚になります。(野川かさね)
“人物写真”で山写真にアクセントを(1)
人物を小さく写して ダイナミックな風景を際立たせる

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撮影ポイント
- 構図=山頂にいる人物が画面の中心になるように配置。 「人」だと分かるように、ひとり一人が重ならないタイミングを狙い シャッターを切るのがポイント。
- ピント=人物に合わせる。人物のいる山の稜線にもピントが合うので山のラインが際立ち、まるで絵画のような一枚になる。
- 光=晴れた日の夕焼け+被写体の後ろから当たる「逆光」。
- 露出(写真の明るさ)=夕焼けのグラデーションと手前と奥の山の稜線、手前の山肌の質感が出るように露出を調整。若干、人物と手前の山が暗くシルエットになり、フォルムが浮かび上がる写真に。 方法:「+/ー」の露出補正ボタンでグラデーションや質感がきれいに出るよう補正。
- カメラ/Nikon FM2
- レンズ/NIKKOR 50mm F1.4
- フィルム/Kodak Gold 100
- 設定/マニュアル(F値:F4、シャッタースピード:1/60)
- 被写体までの距離/無限遠
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“人物写真”で山写真にアクセントを(2)
人の一部に寄って、印象深い一枚に
北アルプスを白馬岳から日本海側に抜けるルートで登山した夜、 ヘッドライトで照らした地図を見ながら予定を確認しているときの一枚。 見返すとみんなで過ごした時間が蘇り、撮っておいて良かったと思える写真になりました。 自分にとって印象的なシーンだったので手元だけに寄って撮影。 こうした写真は山での写真のバリエーションにもなります。(野川かさね)

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撮影ポイント
- 構図=ヘッドライトに照らされた手元に思い切り寄って撮影。
- ピント=地図とペン先に合わせる。
- 光=ヘッドライトの光。 スポットで当たっている手元に視線が集中する。
- 露出(写真の明るさ)=手元に合わせているので周囲が暗く落ち込んでいる。
注意すること!
暗いところで撮影する場合は、手ブレに注意。 脇をしっかり絞めて撮影し、デジタルカメラなら「ISO感度を高くする」と効果的。
- カメラ/Nikon FM2
- レンズ/NIKKOR 50mm F1.4
- フィルム/Kodak Gold 100
- 設定/マニュアル(F値:F1.4、シャッタースピード:1/60)
- 被写体までの距離/約30cm
なるほどコラム
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1.カメラコラム
気軽に山写真を撮ろう!コンパクトデジタルカメラ
小さくて軽い「コンパクトデジタルカメラ」は山撮影初心者にも便利。シャッターを押すだけで失敗も少なく撮れる手軽さが特徴です。防水タイプ、高倍率ズームレンズ搭載タイプ、本格的な高性能・高機能タイプなどさまざまな機種があるので、撮りたい被写体に合わせて選びましょう。
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北八ヶ岳の縞枯山荘。小屋の特徴的なとんがり屋根を切り取った一枚。 (使用カメラ:FUJIFILM FinePix X100)
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箱根・大湧谷の大湧谷。噴煙と雲が入り混じった感じを撮りたくて撮影。 (使用カメラ:FUJIFILM FinePix X100)
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2.撮影コラム
5月~6月におすすめ。 新芽の緑の美しさに目を奪われる新緑
落葉樹の樹木が赤や黄色、オレンジ色に染まる「紅葉」。 見頃の時期が短い「紅葉」には、キレイに色づく気候の条件として「最低気温が10℃以下になる」 「昼夜の気温の差が大きい」「湿気が少ない」などがあります。 こまめに天候の情報をチェックしましょう。
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新緑の時期の上高地。木漏れ日の光が柔らかく、葉っぱのスケ感もきれい。
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同じく上高地にて。川沿いの道は清々しく気持ちいい。
今回の先生
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野川かさね(のがわ・かさね)
写真家。 ホンマタカシ氏のアシスタントを経て、フリーランスとして活動する。 著書に『山と鹿 DEER MOUNTAIN』(ユトレヒト)『Above Below』(Gottlund Verlag)などがある。 アウトドアユニット「noyama」や、クリエイティブユニット「kvina(クビーナ)」として展示、 書籍の制作やイベントも行っている。
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書籍『山と山小屋 週末に行きたい17軒』
料理自慢、温泉自慢、野生動物に出会える小屋……。 山を愛する二人の女性、野川さんと編集者・小林百合子さんが訪ねた、 魅力的な山小屋の数々とそこに流れる時間を、写真と文章で紹介。(平凡社刊) http://www.heibonsha.co.jp
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写真集『Things not to do in Colorado River』
グランドキャニオンを流れるコロラド川を下った旅の写真集。25日間、 450マイルの旅の時間を垣間見れる一冊。フランスと日本のtwelvebooksとの共同出版で、 日本での取り扱い店についてはtwelvebooksのTwitterにて随時更新予定。
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ガイドブック『Mi amas TOHOKU 東北が好き kvina×SHOE PRESsの観光案内』
野川さんが参加するクリエイティブユニット「kvina」と宮城県仙台市にある編集プロダクション 「SHOE PRESs(シュープレス)」が東北を紹介するガイドブックを制作。 少しずつ復興している沿岸部の街、ほっこり温かな祭、 変わらずおいしい食べ物などを野川さんの写真などで紹介している。 http://miamastohoku.posterous.com