春の休日。横浜と鎌倉を結ぶトレイル・通称「鎌倉アルプス」を歩いてきました。
横浜市最高峰に登頂し、さあ鎌倉へ。尾根道をトレイルランナーが駆け抜けます。付近には金沢道、白山道、六浦道など古道があり、鎌倉と東国各地を結んでいました。この丘も武士や騎馬が疾風の如く往来したのかもしれません。
空を仰げば樹冠の宇宙。リスや鳥の鳴き声が聞こえてきます。尾根は東京湾と相模湾の分水嶺となっていて、武相国境はこの分水嶺に沿って定められました。水争いを避ける上でも重要な意義があったのでしょう。測量術の乏しい時代に、正確に国境を定めたことに驚きを感じます。
一帯は横浜自然観察の森として保全され、多様な生き物を育みます。東京に例えれば、渋谷から新宿、四谷にかけての地域と同規模の森。それだけの面積の自然が昭和期の開発を逃れたのは奇跡と言えるでしょう。森にはタヌキやノウサギ、フクロウが暮らし、初夏は蛍の乱舞が見られます。
レンジャーステーション。環境と景観に配慮した、居心地のよい施設です。図書ラウンジやギャラリーを併設し、常駐するレンジャーから様々な情報を得られます。
冬に参加したイベントでのひとコマ。親子での自然観察会や森林保全講習など、自然と親しむ様々なワークショップが開かれます。興味ある方はぜひ参加してみてください。
再び尾根道へ。鎌倉天園を目指します。
朝比奈峠を過ぎると鎌倉市。岩を穿いた切通しが、まるで城門のようにハイカーを迎えます。穏やかな里山の雰囲気は一変、歴史の重みを思わせる厳かな空気に。
鎌倉は、険しい地形を利用した要塞都市。逗子層(700〜400万年前)や池子層(400〜300万年前)と呼ばれる地層が入り組み、複雑な地形をしています。小さな尾根を越えるたびに植生や雰囲気が変わるのも、鎌倉アルプスの魅力のひとつでしょう。
鎌倉天園ハイキングコースに合流。国の史跡・建長寺と紅葉の名所・瑞泉寺を結ぶ、約7kmのトレイルです。鎌倉観光と併せて山歩きを楽しめ、多くのハイカーが訪れます。
天園からは、鎌倉市街と相模湾、伊豆半島が見えました。万治2年(1659年)刊行の『鎌倉物語』には「江戸より見物せんと思う人は、先かたひらより金沢へ来て、鎌倉へ行かば見物の次第よきなり」と書かれています。江戸から金沢八景を訪れ、鎌倉、江ノ島巡りが盛んだった頃、物見の人々も、ここからの眺めに目を細めたことでしょう。
陽も傾いたので円覚寺口に下山。途中の斜面には鎌倉特有の遺跡「やぐら」群が在り、独特の空気を漂わせていました。鎌倉時代、幕府を囲む山は現代のようにリクリエーションの対象ではなく、敵を防ぐ砦であり、あの世とこの世の狭間、いわば、結界のような存在だったかも知れません。石仏にふと足を留め、当時の人々の世界観に思いを巡らせたのでした。
今回使ったアイテム
ゴールの鶴岡八幡宮に到着。京急・金沢文庫駅からのんびり歩いて8時間、約15kmの旅でした。このコースは多くの登山口からアクセスでき、体力や天候に応じて臨機応変にプランを立てられます。自然と歴史彩る山の旅。いざ、鎌倉へ出かけてみてください。
横浜自然観察の森:http://park15.wakwak.com/~yokohama/
鎌倉公式観光ガイド・天園ハイキングコース:https://www.city.kamakura.kanagawa.jp/kamakura-kankou/0512hiking.html
リュックサック:SL 20、パーカー:journey parka、シャツ:delta S/S、帽子:grab DTA hat