夏山といえば縦走!ということで今回は北アルプスでも知る人ぞ知る爺ヶ岳〜針ノ木岳の縦走ルートでフィールドテストを敢行。大型リュックサックにテント泊装備を詰め込んで、剣岳や鹿島槍ヶ岳などの迫力ある山々を望みながら尾根歩きを楽しめる2泊3日のコースを歩きました。3回に分けて、山行の様子やギア・ウェアのインプレッションをお届けします。
爺ヶ岳〜針ノ木縦走(DAY2)はこちら

登山口は立山黒部アルペンルートで知られる扇沢。初日は柏原新道を登り、種池山荘のテント場で宿泊予定。到着後に余裕があれば、爺ヶ岳も登ってみようというプランです。登山口で入山届を出して早速スタート!


今回の縦走で使用するリュックは、カリマー独自の背面調整機能であるサイズアジャストシステムを搭載した往年のベストセラー〈cougar grace 45-60〉と軽量化を追求しながらも実用的な機能を両立した〈strata 50 type1〉をセレクト。いずれも夏山縦走で活躍するモデルです。

コースタイムで1時間20分ほど、登りがつづく樹林帯を進んでいきます。取材したのは7月下旬。好天に恵まれたものの、林内は風通しが悪く蒸し暑いため汗が噴き出してきます。ウェアを調整し、水分をこまめに補給し、登っていきます。


3日分の荷物が詰まったリュックサックはとても重く、登りは堪えます。しかし、高度が上がっていくと眺望が! 明日向かう予定の針ノ木岳も見ることができました。針ノ木岳は日本三大雪渓で知られ、初夏は大きな雪渓歩きを楽しめるとあって人気の山です。

暑さに耐えながらも柏原新道を登っていきます。アップダウンは少なく、比較的歩きやすいのも嬉しいところ。標高の高い北アルプスの山々のなかでも、アプローチしやすい登山道と言えるでしょう。

種池山荘まであと一息、というところで雪渓です。ステップが切ってありますが、油断は禁物。谷の上からの落石の危険もあるため、足早に通過しました。

標高が上がり、木々の合間には高山植物の姿も。ひときわ存在感を放っていたのはシシウド。セリ科の植物で1〜2mと大きく育つのだそう。

ついに種池山荘が見えてきました! 力を振り絞って最後の登りを一歩ずつ歩いていきます。辛い登りはここまで。あと少しで到着するという喜びとリュックサックの重さから解放される安心感が押し寄せます。

振り返ると一面のお花畑。初夏の北アルプスはお花のシーズンです。コバイケイソウやチングルマ、コマクサが見頃とあって、目当ての登山客も多いのだそう。

初日のキャンプ地、種池山荘に到着です。テント泊縦走は荷物の量も重さも日帰り登山とは比べ物にならないほど。それでもリュックサックの重みで肩や腰が痛くならないのはこだわりの背面設計によるもの。受付を済ませてテントを張って、少し早い夕食をいただきました。

日没までまだ少し時間があったので爺ヶ岳へと向かってみることに。小屋の周辺はコバイケイソウとチングルマが一面に咲いていました。夕暮れどき、薄くかかった霧と相まってとても幻想的な雰囲気に。


こんなとき役に立つのが〈mars daypack〉。アタックザックや荷物をデポしてのお散歩に便利です。実は、テント場にいるときはあたりがガスってしまい、「夕焼けは見れそうもないね」と話していました。でも小屋から爺ヶ岳方面に歩いていくと、雲の間からだんだんと夕日がさしてきました。ということで、予想だにしなかったドラマチックな風景をたっぷりとご覧ください!

小屋から少し登ったところ、ハイマツ帯を越えたあたりで太陽が出てきました。

左手には鹿島槍ヶ岳。まるでデイダラボッチのような雲が横たわっています。

さらに登ると種池山荘の奥にそびえる剣岳の山容が。

針ノ木岳も見えました。雪渓も健在です。

山荘から歩いてきた登山道を振り返ります。まさに山奥、周囲には雪をかぶったアルプスが連なり、雲海と夕焼けが演出します。眺めていると、「あの山はなんだろう?」「登ってみたいな」という気持ちが湧いてきます。

刻一刻と変わっていく風景。ダイナミックな雲の動きと空のグラデーションは時間を忘れてしまうほど。

ヘッドライトを点けて爺ヶ岳へ。夕焼けに見とれナイトハイクになりましたが、防寒着やシェルジャケットも携行していたので準備は万全。

爺ヶ岳(南峰)山頂で最後の夕日を眺めました。慌ただしく変化していた空も静かに暗くなっていき、夜がすぐそこまでやってきていることを実感。テント場へ向けて下山します。

眼下に小屋の灯りが見えます。山頂から小屋までは40分ほどの下り。視界が悪いのでロストに気をつけて戻ります。

小屋の手前でガスに包まれました。その後、明け方まで少し雨が降ったり、風が吹いたり。ほんの一瞬の晴れ間に、これ以上ない景色を見せてくれた山々に感謝しつつ、シュラフに潜り込みました。明日は針ノ木岳に向けて尾根の縦走路を歩いていきます。次回は、このルートのハイライトともいえる縦走セクションをお届けします。
〈山行1日目を振り返って〉
初日のルートは扇沢から種池山荘への登り。アプローチ的意味合いが強いのですが、爺ヶ岳で見た夕日はとても記憶に残るものでした。針ノ木岳はもちろんのこと、鹿島槍ヶ岳や剣岳、立山方面、槍ヶ岳など、北アルプスの山々を一望できるのはこのルートの醍醐味といえるでしょう。朝イチで扇沢をスタートすれば、夕暮れ前に爺ヶ岳を登頂できるので、できれば早めに行動するのがおすすめ。
ちなみに柏原新道では暑さが最大の難敵でした。水分摂取量も多く、3リットルは最低でも担ぎ上げたいところ。初日のため食料も多く、リュックサックは重くなりますが、北アルプスならではの景色はその労力を補って余りある魅力があります。今回は大型リュックサックでの縦走をテーマにしていたのですが、もちろん種池山荘や爺ヶ岳山荘といった小屋も充実しているので、小屋泊にして荷物を軽量化するのもいいでしょう。
〈爺ヶ岳〜針ノ木縦走(DAY1)で使用したアイテム〉
〈cougar grace 45-60〉カリマー独自の背面調整機能〈サイズアジャストシステム〉としっかりした作りのヒップベルトが過重を分散してくれたため、背負ってみると肩への負担がほとんどありませんでした。大型リュックサックは肩で背負うのではなく、腰にも荷重を乗せる必要があるため、ヒップベルトの大切さを実感しました。歩きはじめは涼しかったのですが、次第に暑くなってきたため頻繁にウェアを調節しました。そんなときはサイドポケットやフロントポケットなどすぐに出し入れできて便利でした。
〈trek carry hip belt pouch〉
ヒップベルトに取り付けるポーチ。小型のボトルの携行を想定していましたが、行動食やアミノ系サプリなどを入れるのもよさそうです。ちなみに、メッシュポケットをゴミ入れにしていたのですが、予想以上に便利でした。
〈strata 50 type1〉
1日目、背負ってみて実感したのはリュック自体がとにかく軽いことでした。サイズアジャストシステムは非搭載ですが、その分軽量化を実現。カリマーならではの背面パッドやショルダーハーネス、ヒップベルトによる荷重分散はもちろん、背面に内蔵してある3Dパネルが背中にフィット。しっかりとテント装備を担ぐことのできる安心感がありました。
〈mars day pack〉
爺ガ岳(1日目)と蓮華岳(3日目)のアタックザックとして携行しました。かなりコンパクトになるのですが、しっかりとした作りとなっていて、アタックザックとしてだけでなく、ハイキングなどでも活躍しそうです。雨蓋ポケット、ワンドポケットを設けているので、ボトルや小物の収納力抜群。今回は、ピークハント時の防寒着(×2)と行動食を入れたのですが容量に余裕がありました。そんなときは両サイドのコンプレッションを締めればOK。荷物がブレることはありませんでした。