前回の(vol.5 北横岳)では、アップダウンの激しい急登に心が折れたはらぺこガールです。まだまだ修行が足りん、頑張らねば…と心新たに山と向き合う決心をしたのに、気づけば冬本番。すっかり雪山シーズンになってしまいました。雪山はやっぱりハードルが高いから、雪が溶けて暖かくなるのを待とうかな…とつぶやいていたら、「冬は山から足が遠のいちゃうけれど、そんな季節だからこそ楽しめる景色が山にはあるんだよ!」と先輩が教えてくれたのが、日光の雲竜渓谷。検索するやいなや目に飛び込んできたのは、滝が凍ってできた”氷瀑”の写真でした。写真なのに伝わってくる迫力に魅了され、気づけば地図でルートをチェックしている私。アクセスもよく日帰りで行けるということで、迷わず今回のロケは雲竜渓谷に決定!
場所は日光。目印はとてもわかりやすく、日光東照宮の裏側から少し登ったところからのスタート。今回は日帰りで、コースタイムは往復で約4時間のデイハイクのプランを立てました。
雪道を歩く…と身構えていた私には拍子抜けの雪のなさ。今年は暖冬の影響で、例年積もっている道にもすでに雪はほとんど見当たらず。ただ、途中アイスバーンになっている道もあり油断は禁物!舗装された道路を30分程歩くと、稲荷川展望台というダムが一望できる場所があり、目指す氷瀑はダムの真横を歩くルートと確認!これも滅多にできない体験ですね。平坦ではあるものの徐々に高度が上がっていくので、途中からひんやりとした空気に変わりました。
入口のゲートから一時間ほど平坦な道を歩くと分岐地点がありました。この道は最終的に合流はするのですが、少し長い平坦な道か、時間は短いけど少し険しいアルパインという二択になっている模様。私たちはせっかくなのでアルパインルートを選択!そしてここからやっと冬らしい、一面の雪道がはじまりました。
川の水は流れているので、石と石を跳んで渡る場面が何度かありました。足の踏み場を考えるのはちょっとしたゲームのようでワクワクします。でも滑って転んでしまうと大惨事なので、先輩にアドバイスをもらいながら飛び越えていきます。この写真のところ以外には水に浸からないと渡れない場面もあり、完全防水の冬用登山靴がオススメです!
少しずつ岩肌に現れた氷瀑たちが、徐々にサイズアップしていきました。ひとつ見かける度に感動して写真を撮っていると、「どんどん大きくなるよ!まだまだ!」と先へ先へと促され、はやる気持ちを抑えて一歩一歩進むと、そこにはそそり立つ氷瀑の壁が出現!これはもう圧巻の一言。氷でできたお城の壁はきっとこんな感じかも?と、我ながらメルヘンな感想を持ってしまうほど、氷の中がブルーに光っていて、とても美しかったです。
- 氷瀑の足元は氷の床。ここからはアイゼンを履かないと危ないのでしっかり装着します。一緒に凍ってしまった岩や葉っぱを見ながら歩くのは面白いのですが、そもそも履き慣れないアイゼンに、まずは歩き方のコツから先輩に伝授してもらいました。「地面に向かって真下に下ろす事!」何も考えずに歩いていると先端を引っ掛けてしまいます。シンプルなのに意外と難しい…。
雲竜渓谷を調べたときにたくさん出てきて一番気になっていた、氷瀑の裏側へ入っている写真。ついに氷瀑の裏側へ入ることができました!見上げると今年は融解が早かったので見ることが出来なかったのですが、通常の冬であればこの氷瀑がもっとたくさん横に連なって壁が出来ているのだそうです。ハイシーズンにはアイスクライミングもできる場所なので、クライマーたちで賑わうとか。これはもう来年は暖冬でないことを祈りつつ、ハイシーズンに来るリベンジを心に誓いました。
氷瀑は落下水流による水滴が少しずつ凍って成長してできたもので、近くに寄るとそれがとても良くわかりました。驚くほどその姿は大きいけれど、小さな積み重ねで出来ているんですね。近くで観察をしながら自然現象の勉強にもなりました。
そしてさらに奥にも氷瀑がありそうとのことで先へ進むのですが、ここからは予想に反して険しい道のりのスタート。傾斜もきつく、足の踏み場が狭くなっていきました。気軽に行ける場所ではあるといいつつも、やはり山。奥へと進む方はしっかり山装備で向かってくださいね。
ちょっとだけ怖い思いをしつつも、一番大きな氷瀑にたどり着くことができました!さっきまで流れていた水がピタッと止まったような、躍動感のある氷瀑。今にも動き出しそうで、その佇まいに息をのみます。これも自然の神秘。しばらく圧倒されていました。登ってきた道がとても急で滑りやすかったので、帰りは先輩が持っていたクライミング用のロープを使って、安全を確保しながらゆっくりと下山します。これも先輩からのとっさのフォローは勉強になりました。さて、下山した後はお楽しみのご飯の時間です!
- 今日は日帰りのデイハイクということで、お弁当を作ってきましたよ!その名も…冷えても美味しい三色ご飯!(私はそう思っています。笑)
三色ご飯の横に、四色目のようになってしまった紫キャベツは、歯ごたえと野菜が欲しかったので添えてみました。今回は寒い所だからあまり関係ないのですが、フレンチドレッシングで漬け込んだキャベツは腐りにくいそう。
そしてもうひとつ。きっと氷に囲まれた世界は究極に寒いだろうと、身体を温めるお味噌汁も用意。お湯をかけるだけでお味噌汁になる、ナス入り固形スープの中に、少しボリュームを出すために乾燥しらたきを1つ。彩を添えるために生のみつばも入れました。最後に、どこでご飯をしたってデザートは欲しいので(笑)、今回はみかんをチョイス!
ご飯を食べ終わった所で気温がぐっと下がり、霧が立ち込めてきました。天気が悪くなりそうな気配がしたので、早急に帰り支度をすすめます。氷の世界から吹いてくる冷たい風を肌で感じながら、名残惜しい気持ちを抑えて帰路につきます。
- 実は今回の雲竜渓谷散策には裏テーマがありました(笑)。それは、「雪の結晶を撮影する!」。雪が降らないと撮影が出来ないミッションだったので叶えられないかと思っていただけに、とっても嬉しい1枚!気温がそんな低くないので、ひらひらとウェアに辿りつくと1秒程で溶けてしまい、ねばって撮れた奇跡の写真にテンション上がりました。こんな楽しみもある冬山が好きになりそうです!
帰りは行きに選択しなかった道で下山することに。蛇行しながらの道は同じ所を繰り返しているような気持ちになりました。ただ、帰りの疲れている体には平坦な道はとても歩きやすかったです。アスファイルトが出てきたところでアイゼンを外します。慣れてない私にとってはアイゼンの重さは辛かったので、外した時の解放感は嬉しかったです!冬山のギアももっと使いこなせるようになるには、フィールドを沢山経験しなければ…と思いました。
今回使用したリュックは、今シーズンモデルチェンジをしたlancs 28 type1です。デイハイクには十分の28ℓ。フィット感のすぐれた背面プレートとショルダーハーネスのおかげで、石を飛ぶシーンでもリュックのブレに引っ張られる事なくバランスを取る事ができました!側面に備え付けられているコードのおかげで、拡張性の高さも実感。そして今回ウェアで大活躍をしたのが、boma NS jkt (unisex)です。防水透湿のおかげで、雪や氷と擦れる場面でも安心でした。また、リュックに干渉しないベンチレーションのおかげで脱がずに体温調節ができたり、ストレッチ性の高い生地でスムーズな行動もできました。
冬は冬のよさがある。そう実感した山行になりました。四季折々の風景を見せてくれる日本の山はやっぱり素晴らしい!次回はこの様子だと、すぐに春の陽気になりそう。ポカポカ日和の低山ハイキングをご紹介できそうです。お楽しみに!
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【ギア紹介】
●リュックサック(lancs 28 type1):背面には新設計の「形状可変バックプレート」を配置し、安定感やフィット感を高めているほか、ボディシェイプの見直しなど、細部にわたってアップデート。
●フリース(alpiniste W’s fleece):軽量性・保温性を重視してつくられ、ソフトな着心地は行動中のストレスにならない。
●パンツ(arete W’s pants):防風性・摩耗性に優れたソフトシェルパンツ。
●ダウン(vinson W’s down parka):軽くて保温性抜群。収納時はコンパクトになるのもメリット。
●レインウェア(phantom W’s jkt)・レインパンツ(boma NS slim pants (unisex)):今回は使いませんでしたが、レインジャケットと合わせて必携です。
●グローブ(PS glove):ストレッチ性に優れる〈POLARTEC®Power Stretch®Pro〉を採用したグローブ。
●ワレット(VT wallet):ポケットが多く小分けになっているので、絆創膏なども入れておけます。●ネックウォーマー ●シート:THERMARESTのZ Seat ●ストック ●アイゼン ●ゲーター ●ヘットランプ ●デジタルカメラ●食材:水500ml×2 水筒1ℓ×1 昼食(お弁当・固形スープ・しらたき・みつば・みかん) 行動食 ●バーナー、ガスカートリッジ、コッフェル ●ナイフ ●ノート:地図をカラーコピーして貼りました。●お弁当箱(EcoSouLife)・木のボウル ●パワーバンク(OUTDOOR TECH)カメラや携帯で写真を撮る事が多いので、すぐに充電できるよう持っていれば安心のアイテム。