はじめまして!今回の『mountain journal』は、新しく加わりましたマツが担当します!
テーマは「絶景を見に行く!」。ただ、全国各地津々浦々星の数ほどある絶景、どこから攻めていこうかなと考えていたところ、先輩がさらっと「槍を見に行きましょう」と……。
登山歴としては標高2,000m以下の低山に10回ほど行ったくらいで、かくだん自慢できるほどの登山経験はなく、まして標高2,000m以上での登山経験は皆無に等しい自分が北アルプスに踏み入って大丈夫なのでしょうか。しかし!ステップアップしたいと思っていた自分に貴重な経験となることは間違いないし、何より憧れの北アルプスに行ける!しかも名峰「槍ヶ岳」をこの目で見てみたい!と不安を抱きながらも期待はますます膨れ上がっていくのでした。
早速山行ルートのプランニング。せっかく北アルプスに行くのであれば、気持ち良く稜線を歩きたい。そして行くからには、できるだけ「槍ヶ岳」に近づきたい。さらに欲を言えば、槍ヶ岳周辺の山々も見てみたい!
色々調べたところ「燕岳登山口」〜「燕山荘」〜「大天井岳」が稜線歩きもでき、しかも「槍ヶ岳」から「穂高連峰」まで見渡せるとのこと。よし、このルートに決定です!
そしてもうひとつ個人的なテーマとして、「荷物の軽量化」があります。これはこれまでの山行でもずっと課題になっていたのですが、余計な荷物のせいでリュックサックがいつも無駄に重たくなっていたのです。今回は行動時間も長くなるうえ、標高も2,500m以上。できるだけ体力は温存しておきたい……。そこで極力無駄な荷物を減らしていくパッキングを試みました。今回の山行ルートは随所に水を汲める場所があったので、それを見越して最低限の水を携行。また今までの山行経験から防寒着として余分に携行していた厚手のパーカーやパンツ類は結局使わなかったり収納性にも欠けるので思い切って省く事に、その分着回しの効くダウンjktやフリース、といった保温性に優れ且つ軽量なアイテムをセレクトし防寒対策しました。
ただ現地の気温もぐんぐん下がってきている模様。ウェアリングなどにかなり悩まされましたがなんとかパッキング完了!今回リュックサックは長期山行などでも活躍するjaguar 60+10をセレクト。気温の寒暖差は心配ですが、防寒対策はバッチリなはず。そして天気は心配なさそう! いざ北アルプスへ!
- 中房温泉燕岳登山口からのアタック開始は午前3時30分。普段であれば熟睡している時間です。もちろん辺りは真っ暗でヘッデン無しでは身動きが取れない状況……。しかし、できるだけ初日のうちに先に進みたい!そして絶景をカメラに収めたい! ここまで暗い中での山行が初めてだったせいか、序盤から息があがるのも早いような……。
- 登山口から燕山荘までのアプローチは「北アルプス三大急登」と呼ばれているだけあり、樹林帯の中ひたすら登りつづけます。もうすぐ日の出という頃に足下に白い物体が!霜柱ですね……。世間では秋真っ只中。しかしながら山の世界では既に冬の訪れがはじまっていたのでした。
途中休憩ポイントとして4カ所ほどベンチが設けられていて、こまめにレストしながら上を目指すことに。気温は低いのですが、登りつづけているため大量の汗をかきます。そんな時は今回アウターとして着用していたboma NS jkt(unisex)のベンチレーションを開閉し汗冷えにならないよう、衣服内の熱をうまく逃がしながら体温を調節。また喉の乾きは特に感じなくてもこまめな水分補給も心がけました。
周囲は樹林帯なのでなかなか眺望はなかったのですが、途中視界が開ける場所もあり、時間の経過とともに徐々に明るみを増す周囲の景観と併せて少しづつ自分のいる場所が高みを増しているのを感じながら歩を進めるのでした。
朝日も昇り、樹林帯にいながら日差しを感じられるようになった頃、視界が開ける場所で素晴らしい雲海を目にすることが出来ました! ここまでひたすら登りっぱなし、しかも樹林帯が続いていたので感激もひとしおです!
この日は雲の位置が高く富士山も先端部分しか見えないほどでした。普段見えているであろう山々も雲に隠れ、視界の果てまで続く雲はまさに海のようでした。こんな絶景に出会えると不思議と疲れも吹き飛びますね!この先どんな絶景に出会えるのか期待に胸を膨らませながら、暫く雲海に圧倒されていました。
- 合戦小屋でもレストを挟み、なんとか燕山荘に到着。さすが日本屈指の大きさを誇る山荘だけあって、山荘とは思えないほど立派。ここでようやく朝食です。雲海を眺めながらの贅沢なひと時でした。天気はとても良いのですが風が冷たかったのでalpiniste fleeceを着込み、身体が冷えるのを防ぐことに。軽くて保温性抜群なので重宝しています。
いよいよ槍ヶ岳とご対面。燕山荘までの急登でも何カ所か見えるポイントはあったのですが、直接この目で見るのははじめてだったので、いまいち実感が湧かず。
ただ稜線に出てからの槍ヶ岳は全くの別物でした。まるでスーパースターにでもあったかのような衝撃で、その佇まいたるや勇ましくもあり、でもどこか上品で……完全に虜になっていました。多くの登山者が惹き付けられるように山頂を目指すのも深く納得です。
稜線に出てからは、多少のアップダウンこそありましたが気持ちよく歩を進められました。ただ正午近くから雲が湧きはじめ、午前中までの景色とは一転、辺りは霞みがかった景色に。そんな時ハイマツ越しに動く物体が……なんと猿です! 辺りを見回すと2〜3匹の群れがいくつも……全く予想をしていなかったのであっけに取られていると、先輩が「最近山で猿が出没するのを聞いたけど本当にいるんですね。霧が出始めると雷鳥との遭遇率が上がるのですが今日は無理そうですね……。」と寂しそうに一言。こちらも猿の群れもお互いを牽制し合いながらその場は何事もなく通過しました。
その後あっという間に霧に包まれ眺望も無い中早朝からの疲労もあったせいか人生初の高山病も経験。少し歩くと息が切れ、脈打つような頭痛と戦いながら、なんとか大天荘に到着!
山荘手前にあったケルン。自然発生的にできた物だとばかり思っていたのですが、人が積み重ねて出来た物だと先輩に教わり、一つ賢くなれました(笑)
- 山荘到着後すぐにテントを設置。相変わらず視界は悪い状況で、風も出てきてしまったので、当初予定していた日没に併せての大天井岳山頂は諦めることに。
山荘の方のご好意で山荘内の談話室にて夕飯を頂くことができました。天気予報では夜半には雲はなくなりそうとのこと。大天井岳山頂へのアタックは明日朝、日の出を目指します!
翌朝……朝といっても日の出前の午前4時。大天井岳山頂に向けて出発です。とはいえ山頂まではものの10分程で到着。
そこに広がっていたのは、まさに絶景! 昨日の霧は嘘のように晴れ、満点の星空が広がっていました。ここまで天の川がくっきり見えるのも珍しく貴重な光景を目の当たりにすることができました。
昨日は霧で周囲に何があるのか全く分からなかったのですが、周囲の眺望にも度肝をぬかれました。手の届く位の所には槍ヶ岳が迫り、その左奥には穂高連峰の姿も! 昨晩雪が降ったようで岩肌に雪が付いていました。秋を通り越し絵冬の様相です。
槍ヶ岳右側遠くに剱岳も見えました。雑誌でしか見たことがない光景が眼前に鎮座しているのです!とにかくその迫力にただただ圧倒され、暗がりで輪郭しか見えなかったそれぞれの容姿が明るみが増すにつれ徐々にはっきりと映し出されていく様を早く見たいと願う反面、もう少しこのままでいて欲しい……と相反する感情が錯綜するのでした。
そして雲海の果てからの日の出。なぜか自然と両手を併せてお辞儀をしていました(笑)その後周囲は一気に朝焼けに包まれ、なかでも槍ヶ岳が赤く染まる光景がとても印象的でした。
- 山頂からの眺望を堪能し、大天井岳を後にし燕山荘方面へと引き返します。昨日は霧に包まれていましたが今朝は見晴らしもよく、昨晩たっぷり寝られたので身体も軽いです。ただ歩を進めるにつれ遠のく槍ヶ岳に少し寂しさを感じます。
この日も快晴だったのですが時折風が強く吹く場面があり周囲の景色を楽しむ反面、慎重に先を目指しました。2日通して着用していたarete pantsは防風性、耐摩耗性、伸縮性に優れているだけでなく、透湿性も持ち合わせたメンブレンを使用しているため、いかなるコンディションでも最高の対応力を発揮。快適な履き心地を実感しました。手前味噌ながら、オススメです(笑)
昨日きたトレイルを戻り、燕山荘で荷物をデポ。まだ行っていなかった燕岳山頂へアタック! 山頂からの景色はこれまで辿った稜線が一望でき、たった2日間とはいえ、濃密な時間を経験できた思い出の稜線を暫く眺めていました。
- 燕山荘を後にし、いよいよ下山です。沢山の絶景を目の当たりにし気持ちは昂っていても身体は正直で特に脚に溜まった疲労は自分でもびっくりする程でした。思うように脚が運べず苦戦しながらの下山が続きます。途中、合戦小屋にておしるこを頂きほっと一息。最後の下山に向けて気合い注入!
残りの下山道も脚の疲労に追い打ちを掛けるような急坂に悪戦苦闘しながらなんとか下山。下山後は中房温泉にて2日間の疲れを癒しました。
絶景を見に行った今回の北アルプスの燕岳〜大天井岳の縦走、行ったことのない山域での縦走、しかもテント泊。ハードルの高い場所を想像してしまい、最初はとても不安な気持ちでしたが、実際はとても気持ちの良い山行となりました。
これはルート選びや当日の天候、体力的な問題以上に、適切なギア選びが大事なのだと再認識。今回使用したjaguar 60+10は背面長を自在に調整できる〈SAシステム〉搭載モデル。いかなるときでも高いフィット感を感じながらの山行は、長時間歩いても疲労を軽減してくれました。
またウェアリングもboma NS jkt(unisex)は全天候型の万能モデル。いかなる環境下でも衣服内を快適に保ってくれます。実際、アプローチからアタックまでずっと着用していました。vinson down parkaやalpiniste fleeceも、この時期の特に朝晩の厳しい寒さや休憩時の汗冷えもうまく着回すことで寒さにも十分対応可能。こうした適切なギア選択により、自らのパフォーマンスを最大限に発揮できると感じました。
温泉に浸かりながら、次はどこの絶景を狙うか先輩と話が尽きませんでした。マツならではの「絶景」を皆さんにお届けしていきたいと思います! ちなみに、次号で腹ぺこガールが復活を予定しておりますのでそちらもお楽しみにしてください!それではまた次回。
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【ギア紹介】
●リュックサック①(jaguar 60+10):背面のフィット感を調整することが可能。長期山行などで活躍するフラッグシップモデル。
●アウター(boma NS jkt(unisex)):通気性、換気性、伸縮性と、防水機能、耐摩耗性も組み合わせた全天候型のフラッグシップモデル。
●ダウンjkt(vinson down parka):軽くて保温性抜群。収納時はコンパクトになるのもメリット。
●ダウンパンツ(ultimate down pants(unisex)):テント内でオーバーパンツで使用。収納時はコンパクトになるのもメリット。
●フリース(alpiniste fleece):そのボリュームからは想像できないほどの軽さとソフトな着心地が魅力。
●パンツ(arete pants):防風性・摩耗性、透湿性に優れ、更に高い伸縮性も持ち合わせたソフトシェルパンツ。
●帽子(PS beanie)(ventilation cap CN):朝晩の冷え込む時と日中の日差しが強い時で使い分けました。
●グローブ、ネックウォーマー(PS glove)(PS neckwarmer):保温性、フィット感が高く冷気の侵入を軽減。
●オーバーパンツ(boma NS slim pants (unisex)):耐風性にも優れているので保温性のあるパンツと組み合わせれば最強です!
●ポーチ(preston pouch):リュックを下ろさず出し入れしたい時の収納に。
●ストック:特に下りの急坂で使用。●テント:MSRのハバハバ●シュラフ:NANGAのUDD BAG 280DX ●マット:サーマレスト ●ヘッドライト:milestone●ガスカートリッジ、コッフェル:調理用にワンセット用意しました。●食器(EcoSouLife):コーヒー、スープ等を飲むときの必須品●バッテリー(OUTDOORTECH):ガジェット類の充電に必須携行品。●カメラ●食材:水500ml×2 , 4食分ドライフード , 粉末スープ及びコーヒー , 2日分行動食