karrimor mountain journal vol.14 雪上訓練@硫黄岳 / with cougar55-75

    今回のテーマは『雪上訓練』

昨年、目標であった「槍ヶ岳」山行を果たし更なる高みを目指そうと沸々とやる気に満ち溢れているマツです。
とはいえ、まだまだ登山経験の浅い自分は身に付けなければいけないスキルが山ほどあります。今回は冬のシーズンという事もあり「雪」と戯れたい!でも雪山経験が圧倒的に乏しい自分。先ずは雪山での基本を身に付けよう!ということで、今回のテーマは雪山での『雪上訓練』でさらなるスキルアップを目指します。

山域は現状の自分の登山技術やその日のフィールドコンディションなどを考慮し、赤岳鉱泉〜硫黄岳をセレクト。今回は、ガイドツアーや講習を行っている〈YFクラブ〉の鈴木 佐智子さんの指導のもと訓練を行いました。

【雪上訓練内容】は以下のとおり
その①:安全かつ疲労を軽減する雪上歩行
その②:危険を未然に回避! 滑落停止の基本動作
その③:ラッセルで深い雪を突破
その④:冬山ならではの稜線歩きスキル
その⑤:チームワークで安全確保! アンザイレン習得

【行程1日目】
美濃戸口 → 赤岳山荘 → 赤岳鉱泉(幕営)
【行程2日目】
赤岳鉱泉 → 硫黄岳 → 赤岳鉱泉 → 美濃戸口
の山行(訓練)予定。早速訓練開始です!
001@美濃戸口

冬の八ヶ岳は白銀の世界!

非常に心地良い晴天のなか山行をスタート。昨晩降雪があったようで周囲の枝にも雪が付き、辺りは白一色。
「ムギュッムギュッ」と新雪を踏み鳴らす音を楽しみながらゆっくりと歩を進めます。

訓練① 安全かつ疲労を軽減する雪上歩行

02赤岳鉱泉までの道中、緩やかなアップダウンで雪上での歩き方の基本を習得。今まで力任せに登り降りを繰り返していた自分にとって、非常に勉強になる訓練でした。

「登り編」

02_01

フラットフッティング:
主に傾斜の緩い山道で足裏と雪面が平行になるようにアイゼンの爪を刺して歩く。

02_02

キックステップ:
傾斜のついた山道では、膝を軸に振り子のようにして、つま先からアイゼンを指して登っていく。

02_03

クロスステップ:
傾斜のついた山道で、斜度に対して横を向き、谷側の足を山側の足の前を交差させて登っていく。

〈登りの「雪上歩行」訓練のポイント〉

・力まず小股で一歩一歩確実に刻むことでペースを整え疲労軽減に
・一定のリズムで深い呼吸をしながら登ると更なる疲労軽減に
・とにかく、省エネを心がける

「降り編」

02_04

踵から足をつく:
斜度に対して前荷重で後傾にならないように前足を踵からつく。

02_05

足裏全体に荷重:
進行方向側に荷重していき足裏全体で踏み込む。

02_06

膝を柔らかく使う:
膝はサスペンションのように柔らく使い余分な負荷を逃す。

〈降りの「雪上歩行」訓練のポイント〉

・後傾になると転倒の恐れがあるので前荷重を意識
・登りよりも転倒のリスクが高いのでピッケルやポールとのミックスで一歩一歩確実に
・降りも力まず無駄な筋力を使わないよう心がける

03@赤岳鉱泉

雪上歩行のコツを掴んで余力をもって到着

赤岳鉱泉までのルートは、普段であれば両足に疲労感が色濃く出ているのですが、この日は未だ未だ元気。一定のペースを保ちながら、余力たっぷりで到着できました。硫黄岳のピークハントは明日にして残り時間は周辺で雪上訓練を行いました。

訓練② 危険を未然に回避! 滑落停止の基本動作

04急な斜面や凍結箇所などでの「滑落」。夏山とは比べものにならない程そのリスクは高くなります。未然に防ぐためにも明日の本格的な登りの前に、ピッケルを使った基本動作を教わりました。

04_01

うつ伏せでピックを刺す態勢に:
転んだら、まずはうつ伏せになって利き手はブレード、逆の手はシャフトを持ちピックを雪面に刺す。

04_03

肘は開かない:
脇を締めるイメージで肘は開かず体に密着させ、全体重を預けるようピックを雪面に刺し、滑落を止めます。

04_02

膝は曲げる:
うつ伏せでつま先が雪面から離れるよう膝は曲げる。滑落最中つま先が雪面に引っかり二次転倒になるのを防ぎます。

〈「滑落停止の基本動作」訓練のポイント〉

・とっさの判断が求められるので、危険箇所では常に危険なシーンを想定して行動
・一連の動作を身体に覚えさせて、不慮の場面でも即体勢がつくれるように
・周囲と声を掛け合い未然のリスク回避を心がける

訓練③ ラッセルで深い雪を突破

05入山時のフィールドコンディションによっては腰程度の高さまで雪が積もった急斜面を登っていかなければいけないシーンもあります。しっかりと身体に覚えさせるため、ラッセルの動作訓練をしました。

05_01

シャフトを使って雪をかき分ける:
ピッケルのシャフト部分を使って掘るようにかき分ける。

05_02

膝を使ってステップ作り:
かき分けて出来たスペースに膝を使ってステップを作る。

05_03

ステップの踏み固め:
上げた足でステップを踏み固め身体を上げ、また同じ工程を繰り返す。

〈「ラッセル」訓練で得たポイント〉

・焦らずに一段一段確実にステップをつくっていく
・状況によって一人で完遂するのは困難。その場合パートナーとローテーションで
・フィジカルを要する行程なので、事前の体力アップ
・〈glencoe jkt〉のスノースカート、〈edale pants〉のスノーゲイターは激しく動くラッセル訓練でも衣服内への雪の侵入をしっかり防いでくれる

06@赤岳鉱泉(テント場)

雪深い場ではショベルなどで整地をしてからテントを設営

1日目の行程終了。明日実戦形式で訓練も交えて硫黄岳山頂を目指します。テント指定地はかなりの積雪があったので、ショベルで整地。ショベルの扱いに慣れていないので、整地するのにも一苦労でした。
まだ明るい時間帯ですが、冬場は夕方前から急激に気温が下がり風が吹けばあっという間に凍結してしまうほど。そのため、幕営する場合は早め早めの行動が必須。この日も案の定日没後一気に気温が下がり夕飯時でマイナス15℃を下回っていました。

07@赤岳鉱泉

夜明け前の早朝から硫黄岳山頂を目指して出発

2日目の山行(訓練)開始です。昨日教わった雪上歩行の復習をするようにペースは一定を保ち、一歩一歩確実に刻んでいきます。

夜はマイナス20℃ほどの冷え込みだったのですが、夕方から着込んだ〈alpiniste down〉は停滞状態でも保温効果が衰えず、快適な夜をテント内で過ごすことができました。

08@赤岩の頭周辺

高度を上げるにつれ、アルパインの世界へ!

日も昇りこの日も天気は良さそうです。高度を上げ、樹林帯を抜けて周囲の山々を視界に捉えるようになってくると、自然と気持ちも昂ります。逸る気持ちを抑え、呼吸も整え一歩一歩確実に。

09@赤岩の頭周辺

森林限界を抜けた先は想像以上の絶景が待っていました

森林限界を超え稜線に出る前の最後の急登を超えると一気に視界が開け、目線の先に雪化粧された北アルプス連峰が飛び込んできました!左に目を移すと中央アルプスに南アルプスです‼︎冬の日本アルプスが一度に堪能できるとても贅沢な景色を味わうことができました。

訓練④ 冬山ならではの稜線歩きスキル

10樹林帯と違い稜線は危険だらけ。アイゼンが刺さらない程の斜面の凍結や急な突風、天候の変化に出くわすことも。逃げ場のない場所となるだけに、基本的な動作と心構えをしっかりと身体に覚えさせます。

10_01

耐風姿勢:
両足とピッケルを刺す位置関係が正三角形になるようポジショニング。突風に見舞われた際の基本姿勢で風に向かって構えます

10_02

雪庇:
吹き溜まりでできた庇状の積雪。稜線上だと分かりにくく、踏み抜いて滑落するリスクが非常に高い危険な場所です。なるべくトレース以外は踏み入らないこと。

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ピッケルワーク:
滑落に備えて常に山側にピッケルを刺しながら登る(降る)。登りの時はピックを前に、降りの時はブレードを前にして握る。

〈「稜線歩き」訓練のポイント〉

・見晴らしの良い晴天時でも雪崩や突風に備え油断は禁物
・フィールドコンディションによって登山グレードが一気に上がるので周囲の天候は把握しておく
・自らの登山レベルを把握し無理をせず引き返す判断力を持つ(安全第一)

訓練⑤ チームワークで安全確保! アンザイレン習得

11パートナー同士をロープで繋いで、不慮の事態に備え行動します。危険と隣り合わせな核心部や悪天候時での必須事項です。

11_01

ダブルエイトノット:
ロープはダブルエイトノットで縛り、出来た輪にカラビナを通して自分とロープを繋ぎます

11_02

ロープのテンション:
パートナー間のロープはおよそ2メートルほど、適度に張った状態で歩く。弛ませすぎると後続の滑落時の認識が遅れたり、ロープを踏んだりするので危険。

11_03

パートナーのトラブル時:
同行者の不慮のトラブルの際、声を掛け合い耐風姿勢と同じようピッケルを使った低い体勢を瞬時に取る。

〈「アンザイレン」訓練のポイント〉

・フィールドコンディションに応じて声を掛け合える距離感で歩く
・繋がっているから安心ではなく常に互いを支え合う気持ちで
・万が一に備え常に緊張感を持って行動

12@硫黄岳山頂直下

雪と岩のミックスを緊張感を保って攻略

山頂手前の斜面は所々岩肌が見えており、慣れない足場に緊張感が高まりましたが、視界も良く風も穏やかだったため、無事攻略できました。

13@硫黄岳山頂

低山の雪山では味わえない絶景と達成感

とても気持ちの良い冬晴れの中、硫黄岳登頂です!稜線に出た時より更に高度感が増し、目の前に鎮座する赤岳、阿弥陀岳の迫力を堪能。遠くに見える北アルプスも目に焼き付け、いつしかここから見えている山々も制覇できるくらいのクライマーになりたいと想いを馳せるのでした。


– GEAR Impression (ギア インプレッション) –

014

〈cougar〉には雪山登山で活躍する機能が盛り沢山

今回の「雪上訓練」に携行したリュックサックが〈cougar〉だったのですが、山行全体を通して雪山のフィールドで活かせる機能がいくつもあったので、ご紹介します。

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気遣い不要の大容量フロントポケット

アイゼンやショベルなど雪や泥がついたギア類をメインコンパートメントの荷物と分けて収納可能。ポケット底部にドレインホールがあるので濡れた状態でも問題なし。マチ付きで開口部も広く、パッキング作業も楽々。

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豊富なループパーツ

随所に散りばめられたデイジーチェーンやループパーツ、ホールドパーツ類。シーズンやフィールドによって携行するギア類が変わりますが、様々なシチュエーションにも装着対応できるよう装備。

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新設計でさらなるフィット感と安心感

モデルチェンジ後更なるフィット感を得たヒップベルトとショルダーハーネス。ギア類が嵩張り重装備になる冬のシチュエーションでも、活躍してくれました。今回の山行が快適なものとなった非常に大きな要因のひとつ。

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重装備だからこそ威力を発揮する〈SAシステム〉

自らの背面長に一番合うよう調整できるSAシステムは、重装備や長期登山シーンでは大きなアドバンテージとなる機能。山行中にバックシステムを微調整できるのは他にはなく、快適性を持続させてくれます

「cougar」のアドバンテージ〉

・雪山で信頼できるリュックはオールシーズン安心して背負える
・収納性、拡張性はいかなるシーンでも心強いオプション
・より安定したフィット感は重装備を感じさせない程、身体とリュックが一体となって携行可能

15

雪上訓練という新たな経験を得て、確実なステップアップを実感!

冬山での登山は、積雪や氷、気温の低さのほか、不測の悪天候や雪崩といった危険がつきまといます。そのため、安全を最大限に高めるための装備や、必ず抑えておきたい基本的な動作を身につけました。結果、天候にも恵まれ充実した訓練内容となりました。
今回はじめて経験すること、自分一人では気付けなかったことを数多く教わり、その一つ一つが非常に為になりステップアップの手応えに直結しました。また経験豊富なガイドの方と行動を共にすると、講習内容以外の事や山ならではの裏ワザ的なことを教えてくれたりとガイドの方がとる行動一つ一つが勉強になるので、シーズン含め初めて行くフィールドなどではガイド講習を受けることをお勧めいたします。
今回習得したテクニックは、冬に限らず活かしていけることも多かったので次回の山行でもしっかり活用したいと思います。今後雪山登山に挑戦しようと思っている方がいましたら、少しでもこの記事が参考になれば幸いです。
これから残雪期に入ります。雪崩や崩落事故が多くなります。フィールドコンディション含め周囲の天候の把握や自らの登山レベルを十分に考慮し安全第一で楽しんで頂けたらと思います。次回をお楽しみに!

ロケ指導:YF CLUB(0467-61-2116)

cougar55-75

Pick Up GEAR

cougar 55-75

[ cougar 55-75 ]
テント泊や長期の縦走向けに開発された大容量モデル。山行に不可欠な機能を十分に盛り込みながらも、高いレベルでのフィット感、快適性を兼ね備え、フルモデルチェンジ。重心を高くすることで得られる安定性と機動力、長時間の山行でも快適性を維持するバックシステムやハーネス類を設けています。     

ポイント 

  • ヘルメットクリアランスデザイン
  • クイックアクセスオープニング
  • 安定性を高めるアルミチューブ&バー内臓

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マツ

性別:♂
好きな山行スタイル:大型リュックサックでのテント泊縦走
趣味:ボルダリング(主にインドア。3〜2級で伸び悩み…)/スノーボード(シーズンに10回以上は行く。滑っていないと仕事が手につかなくなる)/ランニング(最近サボり気味)/旅行(主に国内。主に海が綺麗な所)
一言:男は黙って大型リュック!

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