世界中を旅するTRANSITが、毎号karrimorのアイテムとともに旅をする企画。今回は厳冬期登山にも対応できるnevis parkaのダウンパーカとともに、アラスカをめぐる旅。北極圏に息づくイヌイットの暮らしをはじめ、地球の息吹を感じるような夏の氷河、さらにゴールドラッシュの残り香が漂う小さな村まで、季節や町とともにダイナミックに表情を変える、この土地の懐の深さに光を当てる。
大河が描いた自然の造形美
アラスカ第二の都市・フェアバンクスを離陸した飛行機は、北極圏ブルックス山脈を越え、北緯68度に位置する村、アナクトブックパスへと向かう。季節は5月初旬とはいえまだまだ雪深く、気温もマイナスとプラスを行ったりきたり。窓から地上を見下ろすと、ユーコン川の水の流れが有機的な模様を創りあげていた(白い部分が凍って雪に覆われた部分)。
飛行機が庶民の足として活躍
整備された陸路のないアナクトブックパスへのアクセス方法は飛行機のみ。だからここでは通常、飛行機を所有しなければ、エアタクシーと呼ばれる“飛行機版タクシー”をチャーターする。今回利用したワーベローズ・エアーの小型機では村への物資も積載された。写真は左の翼から荷物を出しているところだが、小型機はバランスをとりづらいため、小さな格納場所が左右対称いくつかに分散されている。
カリブー猟を生業にするイヌピアック
人口およそ300人のアナクトブックパスは、村と呼ぶのがふさわしいような小さな集落。ここではアメリカ入植前から居住していたイヌピアックと呼ばれるエスキモーの人びとが、今もカリブー(トナカイ)猟を中心とする暮らしを送る。集落内の家はすべてこんな感じで、断熱材は入ってはいるだろうが、木造の簡素なもの。犬ぞりを生活の足にしていた頃の名残で、人口に対して犬が多い。
極北の地を生き抜く狩人
カリブー・ハンティングに興味があることを伝えると、村の長老で村長でもあるレイモンド・パニャック氏が連れて行ってくれた。71という歳を疑ってしまうほどの身体能力の高さに、とてつもなく鋭い目と鼻。それらはすべて、この地で狩人として生きるなかで自然と身についたものなのだろう。
変わりゆくもの・不変なるもの
かつては犬ぞりが定番だったが、今では猟の足となるのは最新型のスノーモービル。ハンドルの脇には猟銃を、後部に連結させた荷台には予備のガソリンを載せ、猟へと向かう。それでも、彼ら猟師の在りようは変わらない。レフ版のように反射して眩しい雪原へ、双眼鏡を向けるレイモンド。何を見ているか訊ねると、わずか数cmのカリブーの“足跡”を探しているのだと答えた。
野生動物とともにある暮らし
厳冬期にはマイナス40度をも記録するここでは、動物の毛皮が最高の防寒着。多くの家の軒先には毛皮が干してある。こちらは、長い体毛と額からのびる角が特徴のジャコウウシの毛皮。マンモスとともに氷河期を生きた動物である。カリブーもそうだが、古くより人びとは、これら野生動物を毛皮から内臓から足の腱まで文字通り全てを暮らしに役立ててきた。
小さな村に降り注ぐオーロラ
通常オーロラは、人口の光がある場所で観ることは難しい。けれど、ここアナクトブックパスではその規模の小ささから、村に灯りがついた状態でもオーロラを観ることができる。写真下部に映っているのが村の主要部だ。
人間と野生動物の交差点
アナクトブックパスからフェアバンクスへと戻るセスナから、後方に見えた景色。周囲をブルックス山脈に囲まれたなか中央に伸びる川は、厳冬期、あらゆる野生動物のための安全な通り道になっている。アナクトブックパスは、それら“天然の道”らが交わる交差点のようなポイント上に位置している。何世紀もも前から人びとは、然るべき理由でそこに村をつくり、暮らしを営んできたのだ。
夏のアラスカの醍醐味
季節変わって夏。アラスカの夏の醍醐味はなんといっても、カヤックで氷河近くまでアクセスできること。太平洋側に位置するプリンスウィリアム湾では、沿岸部にせり立つ10mはあるであろう巨大氷河を見ることができる。その名も「サプライズ氷河」。刻一刻と融解し崩れ落ちる氷河を間近に眺めるのは圧巻の一言。
野生動物との不思議な出会い
アラスカといえば野生動物の宝庫であるが、そのけがれのなさに驚くことがある。ほとんど人間を目にしたことがないからか、人間を恐れないどころか興味を抱き、近寄ってくることもある。こちらを見慣れない野生動物と思っているのだろう。写真のハクトウワシも、こちらが近寄ろうともあまり気にしない様子。そんな風に野生動物との不思議な対峙の瞬間も、この地には多い。
テント泊での氷河撮影
氷河はいわば天然の冷蔵庫。ゆえにからっと晴れることは珍しく、雨も多い。だから太陽が顔を出したら、濡れた携行品をすかさず干す習慣が自然とできてしまった。靴下からフリースから帽子からカメラバッグまでなんでも外に出ているのは、テント泊ではお馴染みの光景だ。
米を炊く、至福の時間
何もない大自然のなかでは、食事は最高に幸せなひととき。貴重な食材を無駄にしないよう、とくに焼き加減の難しい米を炊くのは真剣勝負である。薪を拾い、土台になる木を探し、火を熾し、火加減を調節する、そのすべての作業を丁寧に行う。炊きあがった米は薪にしたスプルース(日本でいうしらびその一種)という油分を多く含む針葉樹のアロマがうつり、風味豊かな仕上がりに。そこに脂ののったキングサーモンが最高のおかずとなる。
金に導かれた人びと
アラスカを訪れる目的は氷河や野生動物だけではない。ワイズマンという人口わずか24人ほどの北極圏の村に行くと、かつてこの地に繁栄をもたらしたゴールドラッシュの時代に時が戻ったようで、不思議な気分にかられる。ワイズマンではおそよ100年前に金が見つかり、世界中から人が押し寄せた。そんな過去に対する思いが強いからなのか、昔の物が本当によく残っているのだ。
極北の地に誘われる者
一方、ホーマーという太平洋に面した町は“the end of the road”と呼ばれるように、どんつきの町。ここには、なぜかヒッピーのように気ままな車上暮らしを送っている人が多い。写真のように子連れの家族も多く、家族でオンボロの車に乗って南の州からやってきては、この地にしばし根を下ろす。これも“北の果て”が醸す土地の魅力なのかもしれない。
- TRANSIT 編集部
夜空をオーロラが舞う”極北”。一年のほとんどが雪や氷に覆われるこの大地は、同時に、人類が住む北の最果てでもある。そんな極北の地であるアラスカに暮らすエスキモー、北欧とロシアを居住地としているサーミ、そして日本は北海道をルーツとするアイヌの人びとに着目。オーロラを追いかけた先には、美しく儚い景色と、たくましい生命力に溢れた人びとの生き方があった。美しきオーロラと北の民の日常を追いかけた総力特集。
karrimorとアラスカを旅して
- [ ネビス パーカー ]
厳冬期の登山まで対応できるオーバーダウン。防水性のある生地を使用しているため、あらゆるシチュエーションで保温性を維持しながら、高いレベルでの行動を可能にします。背面の切り替えしとしては素材にPOLARTEC NeoShellを採用し、ストレッチ性と通気性を確保。フロントのダブルフラップや裾のドローコード、また袖のハンドゲーターなど細部へもこだわり、全方位的に身体を雨風から守ります。ポイント
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