「なんだか色々見逃してる気がしない?」この一言から始まった、アフリカ大陸とヨーロッパを縦断するという、果てしなくスローで壮大な自転車の旅。当時、エリオットの仕事の関係でアフリカ最南端に位置する南アフリカ共和国のケープタウンに在住していた私たちは、仕事を辞め、アパートを引き払い、エリオットの故郷であるイギリスを目指すために飛行機でも車でもなく、「自転車」を選びました。
とはいえど、私もエリオットもまったくの初心者で、エリオットは通勤にロードバイクに乗る程度、私に至ってはママチャリにしか乗ったことがありませんでした。そのため南アフリカでは自転車さえ持っていなかったし、周りに自転車旅の経験がある人もいなかったため、本当に手探りの状態で二人で準備を始めていきました。
それでも自転車で旅をしようと決めた理由は、いくつかあります。一つは、ガソリンなどの資源エネルギーの消費を最大限に抑えて旅ができること。そして二つ目は、都市から都市や、観光地から観光地への旅ではなく、世界の人々のごく日常の生活や文化を感じたかったから。
過去にもバックパッカーとしての旅の経験はあったのですが、大きな都市や外国人向けにセットアップされた観光地をどうしても避けることができず、現地の人と深く関わり、価値観を共有できるような機会はとても少なかったように思います。また、自分の娯楽のためだけに、資源エネルギーを消費し続ける旅のスタイルに対しても、徐々に疑問を持つようになっていました。
イギリスから南アフリカへ飛行機で向かったとき、眼下に広がるアフリカの大地を眺めながら、様々な想像を膨らませたのを今でもよく覚えています。この下の土地に住む人々は、どんな暮らしをしているのか?どんな動植物が生きているのだろう?彼らが直面している問題とは?そして幸せとは…?
当初計画していた自転車旅は、南アフリカからイギリスまでの予定でしたが、結果的にイギリスから日本へも自転車で旅をすることになり、計3年間でおよそ30,000kmを走行しました。この長旅での経験は、まさに私たちが見逃し、忘れかけていた真っ直ぐな感情や感覚、また自分の目で見て感じた世界や、地球のこれからについて、ありとあらゆることを私たちに語り続けました。
そして日本に帰国した現在は、日本の未開地を発掘すべく、全国各地を夫婦で自転車旅しています。このアンバサダーの記事では、Karrimorと共に旅した世界と現在進行形の日本の旅のストーリーの両方を、楽しんでいただけたら何よりです。