都会と大自然が融合した活気溢れる街、ケープタウン。南アフリカ共和国最南端のこの街で、私たちの新たな生活が始まりました。
アフリカといっても、白人文化が色濃いケープタウン市内のハイストリートには、スタイリッシュなカフェやお店が立ち並び、日々観光客や地元の人で賑わいを見せています。しかし一般的な都市と違うのは、街全体が雄大な山と真っ青な海に囲まれているということ。
仕事終わりに山や海へ行くことはもちろん、自由にクライミングができるスポットやマウンテンバイクに乗れるオフロードなどが市内からすぐの場所にあり、あらゆるアウトドアシーンを生活の一部として満喫できる街です。
それは大の山好きの私たちにとって最高の環境でした。平日は朝日や夕日を拝みに仕事の前後に山を登り、週末は金曜日の仕事が終わると同時に車を2~3時間ほど走らせ、キャンプやトレッキングを行うというライフスタイル。南アフリカの大地は日本の約3倍にも関わらず人口は半分以下のため、一歩街から離れると手付かずの大自然が広がっています。
私たちが週末よく出かけていた西ケープ州のセダルバーグは、世界で唯一ルイボス茶が育つ産地で、気候や地形がとても特殊だと言われるため、今まで見たことのないような植物が自生しています。また、自然が豊かということは生き物も豊かなので、山では様々な野生動物に出くわします。
山に流れる小川は限りなく透き通っており、人目も気にせず裸でダイブしたあと、そのまま水をがぶがぶ飲めるようなワイルド感を味わうことができるのです。
そんな夢に描いたようなケープタウンでの生活を、私たちはたった1年半で終えることに決めました。その理由は、アパルトヘイト(人種隔離政策)の根深い名残からなる、激しい格差にありました。1994年にアパルトヘイトは廃止され、人々は土地を自由に移動することができるようになりましたが、経済的なアパルトヘイトは今でも色濃く残っています。
街中で見かけるレストランのお客のほとんどが白人、ウエイターやウエイトレスは黒人。高級車に乗っているのは白人で、ベビーシッターやクリーナーは黒人。といった、人種によってくっきりと分かれる生活水準の違いは、住んでいて違和感を感じずにはいられないものでした。
ケープタウンではっきりと目の当たりにした人種差別や格差社会。こういった深刻な社会課題を見て見ぬふりすれば、最高に理想的な街なのかもしれません。しかし、生活水準が人々の幸せと比例しているかというと決してそうではないということも、この街はしっかりと伝えてくれました。