その国の文化、人々の性質、暮らしぶり、生活習慣は、地元の人と深くかかわらずとも、自転車を漕ぎながら路上で感じられることがよくあります。アフリカの道は、移動するためのものだけではなく、人々の生活の場でもあるのです。過去の記事 “ザンビアの路上”に引き続き、今回は“マラウィの路上”をご紹介します。
マラウィに入り、まず大きく変わったこと。それは子供たちが私たちを見つけるなり「ムズング!!」と誰しもが叫ぶことでした。ムズングとは、スワヒリ語で白人、外国人、ヨーロピアンというような意味合いを持ちます。もし先進国で外国人を見かけたとき、「外人!」などとその人へ向かって叫ぼうなら、その人は差別的な白い目を向けられることになるでしょう。しかしマラウィ(その後行った東アフリカも同様)では、子供たち、時には大人から悪気がまったくない様子で「ムズング」と四六時中呼ばれ続けます。
これまで旅してきたアフリカ南部は、今でも植民地の名残があってか多くの白人系アフリカ人が暮らしており、特に大きな街ではそこがアフリカだと忘れてしまいそうな雰囲気の場所もありました。それに比べ、マラウィで出会ったり見かけたりする外国人の大半は、観光客かボランティアで現地に滞在している人です。そのため、観光地やボランティア団体の拠点地以外で、現地の人が外国人と接する機会はめったにないようで、気がつくと大勢の人に囲まれていることが日常茶飯事でした。
現在、マラウィの人口は爆発的に増加しています。最近では、過去たったの20年間で人口が約1.7倍に膨れ上がり、この増加率はこれからも高くなっていくと言われています。それからさらに驚くべきことは、その人口の約51%が18歳以下という事実です。高齢化社会が進んでいる日本からすると、想像しがたい数字です。
しかし、マラウィ全土を実際に旅してみると、その数字が嘘でないことが分かります。本当にどこへ行っても人だらけ、子供だらけなのです。自転車を漕いでいると、一人の子供の「ムズング!」に近所の子供たちが反応し、何十人もの子供たちが家の中から飛び出してきたこともありました。マラウィで人に晒されず野宿をすることは、ほぼ不可能と言ってもいいでしょう。
人々は街や田舎に限らず国土の全体に散らばっていますが、そのなかでも格段に人が集中する場所があります。それは市場=マーケットです。自転車を漕いでいると、本当にたくさんの市場に出くわします。村にひとつは必ず市場があり、定期的に大規模なマーケットが開かれていました。
この日訪れたマーケットでは、古着や工具などの製品から、野菜や魚などの食料まで本当に何でも売られており、片隅には散髪屋や携帯充電屋もあって、巨大なショッピングセンターでもこのマーケットには叶わないのではないかというほどの品揃えでした。写真は、アフリカ人のおやつであるサトウキビです。彼らはこれをそのままかじりますが、私たちの歯ではなかなか上手く裂くことができませんでした。
マラウィの人は、とにかく穏やかで気さくです。学校では6歳から英語を習うとのことで、国民のほとんどが堪能な英語を話すことができます。そのおかげで、お互いの価値観や彼らが抱える問題、また宗教観などの複雑なトピックについて、彼らと語り合うことができたのは素晴らしい経験でした。
「マラウィでは、仕事をしている時間より何かを待っている時間の方が長いよ。」と、マラウィで仕事をするトルコ人の友人が昔言っていたのを思い出しました。明るくのんびりとしたマラウィ人の気質を知った今、その言葉の意味がようやく分かったような気がします。